初四国

 他の会社の人はどうなのかはわからないが、私がいる会社は伝統的に「みんな公平」みたいな空気がある。社会主義のような話でも差別がないというような話ではなく、飲み会などの費用についておごりおごられ、接待のような物が無い。もちろん個人対個人であればそういったものもあるのだが部署の飲み会で新人の分を他の人が出すとか、会社対会社の飲み会でお客様の分を出すとか、だしてもらうとかそう言ったことがない。これはある意味会社の文化で、外から見た場合はわからないが中から見るとある意味ヒステリック的に見える。そんなわけで、おごられるという発想がまずない。ご飯を食べに行けば自分の食べた分は間違いなく自分が払う、という意識で頼むわけで、私は量を割と食べる方なので他の人よりも金額が高くなる。そんな状態で急に伝票を持って払いに行かれたらそりゃもうビックリするわけで、おごって頂くのはありがたいというよりひたすら恐縮です。今回の出張がまさしくそうで、お客さんに乞われてわざわざ四国まで行ったわけだけれど、だからといっておごって貰うことなど考えてなかったのでおごられたのは非常に申し訳なかった。そのお客さんの倍ぐらい食べていたから尚更だ。そんなわけで今回の出張はのっけから恐縮しまくりで始まったのだった。
 ただ、今回良かったのは飛行機に普通に乗れたこと。酷い動悸、息切れ的なものはあったけれどパニックになったりするようなことはなくまぁ自分でも割と大丈夫だったのが安心した。でも何が一番大きかったって、やっぱり小説のお陰だろう。素晴らしい小説は心を落ち着けてくれるというか、現実逃避させてくれる力を間違いなく持っていると思う。現実逃避自体はあまりいい言葉でもないけれど、それでもこういうどうにもならない時はやはり必要だと思う。
 今回のこの出張の旅で、ついに北方版三国志を読み終わった。全13巻を大体2週間ぐらいで読んだ計算になるから1日に1冊の計算になるかな。普通の小説でこのスピードは結構早いんじゃ無かろうか。まぁ早さなんて何にもなりゃしないけれども。それでも普通に読む人と同じだけ頭に残すことが出来るのであればやはり時間を有効活用できる気もする。早く読んでも頭に何も残ってなければ結局何にも意味なんてないし。

 出張は夜間の対応だったけれど、少し心配なこともありつつも何とか問題もなく終了。今回は何かが起こった時の人質のようなもの(何かあった時に吊し上げを食らう役)だったので何も起こらなかった事にほっとした。向こうの人もご飯をおごってくれたり空港まで運んでくれたりでいい人でよかった。
 いつも思う事だけれど電話でどれだけ嫌な対応をしてくる人だったり無理難題をふっかけてくる人であったとしても、実際に会った時にそういう態度に出る人はほとんど居ない。実際に会って話せばこっちの事もわかってくれたり相手が何故そんなことをしたのかも素直に話してくれたり、なんだかんだで状態が改善することは多い。仕事をしていると「それくらい電話で十分だろ」という程度の打ち合わせでもこっちに来てくれる人がいたりするが、そういう人間の心理のような物をわかっている人なのだろう。
 ちなみに実際に会ってもやっぱり厳しいことをいう人も居るが、そう言う人はそう言う人で逆に裏表が無い人だと判断できるのでやはり実際に会ってみることは効果が大きいと思っている。本来であれば仕事なんだから誰も彼もが裏表なく出来るのが一番なんだろうけれどそういうのはやはり難しいのだろう。

 夜通し働いて、すぐにまた東京にとんぼ返り。初めて降り立った四国の地は空港と夕飯を食べた場所と仕事先のみ。滞在時間およそ12時間という短い時間で、しかもやたらと寒かったので四国に行ったという感慨が全く無い。陸路を通って行ったのならまだしも飛行機だったから余計にそう感じるのだろう。帰りの飛行機は行きに比べたらやはり調子が悪くなったが、ここも本のお陰で何とか乗り切った。そのまま家に帰り昼飯を食べ、すぐに寝もしないで本などをよんだり。完全に生活時間帯がおかしくなっているがまぁしょうがない面もあるのだろう。